遺族労災記録開示請求訴訟
アスベスト被害に関する労災記録には、労基署が行った調査等の情報が記録されています。アスベスト被害について、遺族が企業や国に責任追及する際に、この労災記録が有力な手がかりになります。
しかし、その開示を求めるための法律である行政機関等個人情報保護法では、開示対象となる個人情報は「生存する個人に関する情報」とされており、被災者が死亡している場合、死者の情報である労災記録については、原則として開示されない取り扱いとなっていました(例外として、遺族が被災者の遺族年金等を受給している場合に限り開示されていました)。
本件の原告らは、2017年10月以降に、工場型(泉南型)国賠訴訟について、厚生労働省から国賠訴訟を促す個別通知を受けとった遺族でした。弁護団に相談があり、工場型(泉南型)国賠訴訟を提起できるかどうか調査するために、労働局に労災記録の開示請求をしたところ、遺族であり遺族年金等を受けているわけではないとして、不開示決定処分を受けました。そこで、2018年に不開示決定処分の取消訴訟を提起しました。
2018年6月5日、大阪地方裁判所は、被災者の労災記録に記載されている情報は、被災者から遺族が相続した国に対する損害賠償請求権に関連する個人情報であり、遺族である原告らの個人情報でもあるとし、不開示決定処分を違法として取り消しました。これに対し国は控訴せず、開示を命じた判決が確定しました。
その後、国は通達を出し、工場型(泉南型)国賠訴訟を提起できる場合には、遺族であっても労災記録を開示するように取扱いを変更しました。これにより全国で開示の範囲が拡大し、遺族の救済拡大を実現することができました。